LINE公式アカウント活用 〜小売業界〜

小売業界では現在、消費者の購買行動の多様化やオンライン市場の拡大により、大きな変化が起きています。経済産業省のデータによると、2024年上期の小売業販売額は前年比で増加しており、主要な業態すべてで販売額が増加傾向にあります。しかし、長期的には人口減少などの影響により市場規模は縮小すると予測されています。このような状況に対応するため、オンラインとオフラインの垣根をなくし、顧客体験を向上させるOMO(Online Merges with Offline)という考え方が重要視されています。これは、オンラインとオフラインを融合させ、顧客がチャネルの違いを意識せずにサービスを受けられるようにするビジネス戦略です。OMOの実現には、顧客データの活用やデジタル技術の導入が不可欠となっています。
小売業界の現状
1.業界動向
小売業界は、生活様式の変化や競争激化、新型コロナウイルスの影響などにより、従来の店舗中心からオンライン市場での販売・購入へと大きく変化しています。特にEC(電子商取引)市場は著しい成長を遂げており、これはオンラインでの購買が生活者にとって身近な選択肢となったことを示しています。一方で、実店舗での購買体験に対する需要も依然として存在しており、オンラインとオフラインを融合させた購買行動が増加しています。
このような状況下で重要視されているのが「OMO(Online Merges with Offline)」という考え方です。OMOについては次項で詳しくご紹介します。
2.OMOとは?
近年、「OMO」という言葉をよく耳にするようになりました。OMOは「Online Merges with Offline」の略称で、オンラインとオフラインの境界をなくし、融合させることで、顧客に一貫した seamless な体験を提供するビジネス戦略です。この戦略の目的は、実店舗の魅力とオンラインの利便性を組み合わせ、より豊かな購買体験を実現することにあります。
OMOを実現する上で特に重要となるのは、「顧客視点でのサービス提供」と「データの活用」です。顧客の購買行動データを収集・分析し、一人ひとりに最適なアプローチを行うことがOMO戦略の核となります。このようなデータ活用において、LINE公式アカウントは非常に有効なツールと考えられます。
具体的にLINE公式アカウントがOMO施策に向いている理由
LINE公式アカウントは、他のSNSと比較して、アクティブユーザー数が多く、幅広い年齢層に利用されています。これにより、様々な顧客層にアプローチすることが可能です。さらに、メッセージの開封率が高い傾向にあるため、顧客に情報が届きやすいというメリットがあります。これは、顧客との継続的なコミュニケーションを図り、ロイヤリティを高める上で非常に有効です。
また、LINE公式アカウントは、顧客情報や購買履歴などのデータを収集・蓄積しやすいという特性を持っています。例えば、ID連携やショップカード機能を通して得られるこれらのデータを分析することで、顧客一人ひとりの属性や嗜好、購買パターンなどを詳細に把握できます。これにより、顧客に合わせたパーソナライズされた情報提供や、効果的なセグメント配信が可能となります。
さらに、LINEは、チャット機能や自動応答メッセージなど、顧客とのインタラクティブなコミュニケーションを促進する多様な機能を提供しています。これらの機能を活用することで、顧客からの問い合わせに迅速かつ丁寧に対応でき、顧客満足度を高めることができます。これらの点は、データに基づいた効果的な顧客アプローチを実現し、OMO推進においてLINE公式アカウントが非常に有効なツールであると言える理由です。
次章では、LINE公式アカウントを活用した具体的なOMO施策について詳しく見ていきましょう。
〜参考〜
LINE公式アカウントの特徴記事はこちら!
企業が「LINE公式アカウント」を使うメリット
LINE公式アカウントを用いた、OMO実現の施策
小売業界において、オンラインとオフラインを融合させるOMOは重要視されています。ここでは、LINE公式アカウントを活用して、このOMOを実現するための具体的な施策をいくつかご紹介します。LINEの機能を活用することで、顧客はより便利にサービスを利用でき、企業側は顧客データを効果的に活用できるようになります。
1.ID連携を用いて、実店舗とオンラインサイトともに使用できる会員証
LINEのID連携(※1)を活用することで、従来の物理的な会員証をデジタル化し、LINEアプリ上で管理・利用できるようになります。これにより、お客様はスマートフォン一つで、実店舗とオンラインストアの両方で会員サービスを利用できるようになります。例えば、店舗での買い物時にLINEの会員証を提示してポイントを貯めたり、オンラインストアで貯めたポイントを利用して買い物をしたりすることが可能です。
このデジタル会員証は、お客様の利便性を高めるだけでなく、企業側にも大きなメリットをもたらします。会員証を通して顧客データを一元管理できるため、実店舗とオンラインそれぞれの購買履歴や行動データを統合的に把握できるようになります。これにより、顧客一人ひとりの興味や関心に合わせたパーソナライズされたメッセージ配信やクーポン提供が可能となり、より効果的なOne to Oneマーケティングを実現できます。例えば、特定の店舗で特定の商品を購入したお客様に対し、関連商品の情報や限定クーポンをLINEで配信するといった施策が考えられます。
また、ID連携により、会員登録の手間を簡略化し、新規顧客の獲得にも繋げることができます。
このID連携を活用した会員証機能は、アパレル、雑貨、コスメ、家電量販店、スーパーマーケットなど、幅広い小売業種におすすめです。特に、オンラインストアと実店舗の両方でサービスを提供している企業にとって、顧客の購買行動を統合的に把握し、よりパーソナルなアプローチを行う上で非常に有効な手段となります。
※1:ID連携とは、企業の持つ顧客情報とLINEアカウントを紐付けることを指します。
2.ポイントカードをデジタル化
LINE公式アカウントの「ショップカード」機能を活用することで、ポイントカードをデジタル化できます。これは、ユーザーがLINEで友だち登録を行い、会員登録と連携することで利用可能になります。LINEアプリ上でポイントカードを利用できるため、顧客は物理的なカードを持ち歩く必要がなくなり、会計時などもスムーズになります。また、複数のポイントカードをLINEアプリ内の「LINEマイカード」にまとめて管理できるため、利便性が大幅に向上します。
さらに、LINEショップカードは友だち追加を促進するきっかけにもなります。ショップカードの利用にはLINE公式アカウントの友だち登録が必要なため、お得な特典と合わせてショップカードを訴求することで、自然な形で友だち数を増やせます。友だちが増えれば、店舗の最新情報やクーポンなどをより多くの顧客に届けられるようになり、再来店を促す効果が期待できます。貯まったポイントを店舗で利用できるように設定することで、顧客の店舗への来店を促進し、オンラインとオフラインの連携を強化できます。
ショップカードの利用状況データはLINE公式アカウントの管理画面でリアルタイムに分析できるため、顧客の行動を把握し、ポイント数や特典内容の見直しなど、より効果的な販促施策につなげることも可能です。この機能は、アパレル、雑貨、コスメ、家電量販店、スーパーマーケットなど、ポイントカードを導入している幅広い小売業種におすすめです。特に、顧客の囲い込みやリピート率向上を目指す店舗にとって、効果的なツールとなります。
3.データを活用したメッセージ配信で顧客の購買を促進
LINE公式アカウントでは、会員証を通じた購買データやアンケートで取得した顧客の嗜好データを組み合わせることで、一人ひとりに合わせたメッセージ配信が可能になります。例えば、顧客の購入サイクルに合わせて最適なタイミングでメッセージを送ったり、購入履歴に基づいたおすすめ商品を提案したりすることで、顧客にとって有益な情報提供を行い、結果として再購入を促すことが期待できます。
さらに、LINEヤフー株式会社の発足により、Yahoo! JAPANの検索データや、Yahoo! JAPANから他のサイトへ遷移したデータなどを活用した高度なセグメント配信も実現できるようになりました。顧客の購買履歴に加えて、検索行動データなどを分析してセグメントを作成することで、購入を検討している可能性が高い商品に関する情報などを配信し、よりパーソナライズされたコミュニケーションを通じて購買意欲を高めることが可能です。このようにデータを活用することで、顧客の状況に合わせたきめ細やかなアプローチが可能となり、顧客満足度向上やリピート促進に繋がります。このデータ活用は、アパレル、雑貨、コスメ、家電量販店、スーパーマーケットなど、顧客の購買履歴や行動データを取得できる幅広い小売業種におすすめです。特に、オンラインストアと実店舗の両方でサービスを提供している企業にとって、顧客の購買行動を統合的に把握し、よりパーソナルなアプローチを行う上で非常に有効な手段となります。
4.Beaconを用いたデータ連携で、購買行動に基づいた訴求
LINE Beaconは、Beacon機器を活用して特定のエリア内にいるLINEユーザーを検知し、情報を配信する仕組みです。店舗や施設にBeaconを設置することで、来店したユーザーのLINEアプリにメッセージやクーポンを自動で送信できます。これにより、タイムリーな情報提供が可能になり、来店したその場で購買意欲を高めるようなアプローチが行えます。
例えば、店舗限定のクーポンを配信したり、特定の売場に合わせた商品情報を提供したりすることが考えられます。
Beaconを用いたデータ連携によって、ユーザーの店舗での行動データを取得し、そのデータを分析することで、どのようなメッセージや情報が購買につながるのかを把握することができます。メッセージを配信した後に、実際にそのユーザーが来店したかどうか、どのような商品を購入したかを計測し、LINEでのアプローチが来店や購買にどの程度貢献したかを分析することも可能です。このような効果分析を行うことで、よりターゲットに合わせた効果的なメッセージ配信やキャンペーン施策を検討し、改善していくことにつながります。
LINE Beaconは、特に実店舗を持つ小売業全般におすすめです。アパレルや雑貨店では、特定の売場に設置して商品情報を配信したり、期間限定のセール情報を届けたりすることで、顧客の購買意欲を高めることができます。飲食店では、来店時にクーポンを自動配信したり、おすすめメニューを知らせたりするのに活用できます。商業施設では、施設内の各店舗の情報を発信したり、イベント開催を告知したりすることが可能です。実際に、ローソンは全国約13,400店舗にLINE Beaconを設置し、来店者向けに抽選キャンペーンを実施しています。 ユニクロでも一部店舗で導入し、店舗付近に近づいたユーザーにクーポンやチラシを配信しています。 これらの事例からも、LINE Beaconの活用が来店促進や顧客単価の向上につながることがわかります。 また、配信結果をもとに効果を測定し、次回以降の施策を改善できる点も大きなメリットです。
5.チャット機能を用いて、実店舗のような接客をLINEで実現
LINE公式アカウントのチャット機能は、顧客からの質問や問い合わせにリアルタイムで対応できるため、実店舗にいるかのようなきめ細やかな接客を実現します。商品の詳細や在庫状況、配送に関する疑問など、顧客が抱える不安をすぐに解消することで、購買意欲を高める効果が期待できます。チャットでのやり取りを通じて得られた情報は、顧客が実店舗での購入を検討する際の参考となるだけでなく、オンラインでの商品予約や店舗での受け取り予約のサポートにも活用可能です。これにより、オンラインとオフラインを連携させた一貫したサービスを提供し、顧客の利便性を向上させることができます。
チャット機能はメッセージの送受信に追加費用がかからず、コストを抑えながら顧客との密なコミュニケーションを図れる点も大きなメリットです。営業時間外の問い合わせには、応答メッセージ機能を活用することで、顧客を待たせることなく基本的な情報提供を行えます。このチャット機能は、アパレル、雑貨、コスメ、家電量販店、スーパーマーケットなど、顧客とのコミュニケーションが重要な小売業全般におすすめです。特に、オンラインストアと実店舗の両方でサービスを提供しており、顧客からの問い合わせが多い企業や、顧客一人ひとりに合わせた丁寧な対応を重視したい企業にとって、非常に有効なツールと言えます。幅広い業種で活用されており、顧客満足度向上やリピート促進に貢献します。
小売業界の成功事例をご紹介
LINE公式アカウントを効果的に活用し、成果を上げている小売業の具体的な事例をご紹介します。各店舗がどのような施策を展開し、どのような成功を収めているのか、その詳細を見ていきましょう。これらの事例は、皆様の店舗におけるLINEアカウントの活用や施策立案の参考となるはずです。
LINE公式アカウント活用で“査定の不安”を解消!ユーザーに選ばれる導線づくりの秘訣
ブランド品のリユース事業を展開するコメ兵では、顧客とのオンラインでの関係構築と「査定」「買い取り」に対する心理的なハードルを下げることを目的に、2016年からLINE公式アカウントを活用した査定サービスを提供しています。
このサービスでは、ユーザーはコメ兵のLINE公式アカウントを友だち追加するだけで、査定したい商品の写真を送信し、約30分で査定金額の目安を把握できます。
これにより、「面倒くさそう」「値段がつくか分からない」といった、買い取りに関する不安を軽減し、気軽に査定を試せる環境を提供しています。サービス開始からわずか8日間で2,000件以上の査定申込があり、その後も順調に増加し、2022年5月には月間利用件数が3,000件を超えました。
特に注目すべきは、このLINE査定がきっかけで来店するユーザーが、2021年9月と比較して約5倍に増加したという顕著な成果です。このように、LINE公式アカウントを用いた簡易査定は、新しい顧客の獲得だけでなく、実店舗への誘導、つまり来店促進にも大きく貢献しており、コメ兵の事業成長に欠かせない戦略の一つとなっています。
引用元:LINEヤフー for Buisness
EC売上の最大4割がLINE経由!ユーザー行動を変えた活用ポイントとは
ELCジャパン合同会社は、エスティローダーやクリニークをはじめとする多岐にわたるビューティーブランドを展開しており、日本市場におけるデジタル戦略においてLINEを非常に重要なチャネルと位置付けています。世界規模で展開する「ソーシャルコマースエコシステム戦略」の一環として、LINE公式アカウントとLINEミニアプリを積極的に活用しています。これにより、ユーザーが日常的に利用するLINEアプリ内で商品の閲覧から購入までをスムーズに行える購買体験を提供しています。
この戦略的な取り組みの結果、自社ECサイトで購入したお客様のうち、驚くべきことに1割から4割がLINEを経由しているという顕著な成果を上げています。LINEミニアプリを活用して自社ECサイトをローンチし、自社EC限定商品の販売といった独自施策と組み合わせることで、着実に売上を拡大しています。
加えて、LINE公式アカウントを通じて、各ブランドの最新製品情報や魅力的なキャンペーン情報、お得な特別セール案内、さらには商品の効果的な使い方など、お客様一人ひとりの興味や関心に合わせたパーソナライズされたメッセージを配信しています。これにより、効果的なブランド訴求を実現し、お客様とのエンゲージメントを深めています。さらに、LINEギフトへの出店も行っており、ギフト需要の獲得や、ブランドのギフティングとしての認知度向上を目指しています。
これらの包括的な取り組みは、単なる一方的な情報発信に留まらず、LINEを購買に直結する重要なチャネルとして位置づけ、お客様との結びつきを強化することで実現した大きな成果と言えるでしょう。
引用元:LINEヤフー for Buisness
来店頻度が向上!LINEを軸にした本社と店舗の連携施策とは
クイーンズ伊勢丹では、新たな集客方法としてLINE公式アカウントを導入しました。当初は各店舗が個別に運用していましたが、店舗ごとの特徴により効果にばらつきが見られました。そこで、本社と店舗が密接に連携する運用体制を構築しました。本社がリッチメッセージのクリエイティブ作成や、他の店舗での成功事例の共有、友だち募集のための販促物作成などをサポートすることで、各店舗の運用負荷を大幅に軽減しました。これにより、店舗はそれぞれの地域性や顧客のニーズに合わせた、よりパーソナルな情報発信に注力できるようになりました。
店舗主導の情報発信は、顧客とのエンゲージメントを強化し、来店頻度向上に繋がっています。特に、まぐろの解体ショーやボージョレ・ヌーヴォー販売といった店舗独自のイベントの事前告知は、実際に来店や購入を増加させる効果が確認されています。また、LINE公式アカウントのショップカード機能(LINEミニアプリ)を活用することで、これまでの紙のスタンプカードにかかっていたコスト削減も実現しました。これらの取り組みを通じて、LINE公式アカウントは顧客との繋がりを深め、店舗への集客を促進する上で不可欠なツールとして高く評価されています。
引用元:LINEヤフー for Buisnes
まとめ
小売業界において、OMO(Online Merges with Offline)の実現は、変化する消費者の購買行動に対応し、顧客体験を向上させる上で不可欠です。LINE公式アカウントは、その強力な機能と高いアクティブユーザー数から、OMO推進の有効なツールとなります。ID連携によるデジタル会員証は、オンラインとオフラインの顧客データを統合し、パーソナルなアプローチを可能にします。また、ショップカード機能でポイントカードをデジタル化し、顧客の利便性を高めつつ、友だち追加を促進できます。
収集した顧客データに基づいたメッセージ配信は、購買促進に繋がり、LINE Beaconを活用することで、来店した顧客へのタイムリーな情報提供が可能となります。さらに、チャット機能は、実店舗のようなきめ細やかな接客をオンラインで実現し、顧客満足度を高めます。
実際にコメ兵やELCジャパン、クイーンズ伊勢丹といった小売企業がLINE公式アカウントを効果的に活用し、査定件数増加、ECサイト売上への貢献、来店頻度向上などの成果を上げています。これらの事例は、LINE公式アカウントが小売業界におけるリピーター獲得や新規顧客開拓に繋がり、事業成長に貢献することを示しています。LINE公式アカウントの機能を理解し、顧客の行動を分析しながら継続的に改善を行うことで、より大きな効果が期待できるでしょう。
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